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2008年5月

Sister Syndrome 第三話

 ああ、天井が白い。

 ……白い? あれ? 俺どうしたんだっけ?

 ――しばし、記憶の整理。

 そうか、あの時、亜利未の本気パンチを食らって。

 俺は首だけを左右に動かし状況を確認した。保健室だった。そして、驚いた事に、亜利未がパイプ椅子に座っているのが見えた。寝ているようだ。

 まさか、亜利未が俺を? いくらなんでもそれは無理だな。絶対一人じゃ運べまい。真二か?

 そうこう思いを巡らせている間に亜利未が起きた。

「あれ? 起きたんだ」

「あ、ああ……」何、ちょっと照れてんだ俺。

「だいたいお前が悪いんだぞ」言いながら亜利未がそっぽを向く。

「まぁ、あれはほんの冗談のつもりで……」

「当たり前だ」向き直りながら人差し指を立て、俺の胸を突いた。

「あ、いや、その」

「まぁいい。今度やったら殺すからな」

「さぁ、それはどうかな」はぐらかしてみる。

「ぜぇ~ったい殺す」今度は中指を立て俺を威嚇。しかし、その言葉とは裏腹に、表情が柔らかいのが見て取れた。亜利未ってこんな顔もすんだ。

「兎に角、もうちょい寝てなよ。じゃ、あたしは行くから」亜利未は俺に背を向けると、その場を後にした。

「寝てろ……か」

 って、俺が黙って寝てる訳がねぇ。俺は唯の下校時間に合わせて迎えに行かなくてはならんのだ。これは、兄として使命なのだよ、悪いな亜利未。

 身体を起こすと顔面が少し痛むが、後は大丈夫だ。可愛げの無いベッドから出ると、入り口横にある鏡で顔をチェック。

「よし」赤みが多少残ってはいるが、時期消えるだろう。っしゃぁ、待ってろよ我が妹よ。

だが、まだ授業が残っている……やっぱ、寝るか。

 やっと放課後だっ! たっぷり寝て英気も養った。ここからが勝負だ。

 俺は早足で学校を跡にすると、唯の中学へと直行した。いやぁ、心が踊るとはまさにこの事、足取りも軽いぜ。

 十数分歩くと、目的の校舎が視界に入ってきた。いよいよだ……。

「お兄ちゃん!」唯は嬉しそうな顔を見せ駆け寄ってきた。俺は軽く右手を上げて、

「やぁ唯、今帰りか?」と返した。

 唯は俺の前に来ると、息を整えながら言った。

「うん、でもどうしてここに?」

「いや、ちょっと通りかかったから」

「なぁ~んだ、てっきり唯の事迎えに来てくれたのかと思ったのに」

 ちょっと残念そうに、むくれる唯。

 その表情が何とも可愛いっ! ぎゅぅっとしたいくらいにだ。

 そして俺は、笑いながら言った。

「そうすねるなよ、ホントは唯を迎えに来たんだ」

「ホント? 唯、嬉しいっ!」

 ぱぁっと明るく笑う唯が、俺に抱きついてきた。

「はっ」俺は首を左右に振り、我に返った。ヤバイヤバイ、また俺の妄想癖が出ちまった。

「ちょっとぉ、あの人さっきからニヤニヤしてて気色悪いのよ」

「うっわぁ~まじ? 先生呼ぶ?」

「やっぱ警察っしょ」

「だよねぇ」

 下校中の女子達の言葉が、俺の鼓膜を揺るがす。ちっ、手遅れか……。

 仕方ねぇ。

 俺はその場から離れ、様子を見る事を余儀なくされた。勿論、校門は視界に入っている。少し遠いが、完全な変態指定を受けるよりはマシだろう。

 ――十分。

 

 ――――ニ十分。

 ――――――三十分。

 遅い、遅すぎる。下校時間が過ぎに過ぎている。まさか、唯に何かあったんじゃ。まさか、誘拐……。ありえる、唯は誰が見ても可愛いからなぁ。

 君可愛いね。とか何とか言って、無理矢理車に乗せられて。それから……それから、営利誘拐って事はまずないだろう。俺んちは金在る訳じゃねぇし。

 やっぱ、在るとしたらイタズラ目的か。やばすぎる、こうしちゃおれんっ! 

 待ってろよ唯! 今、俺が助けに行くからな。

 大変な事になったぞ。どうする? まずは警察に連絡か? んや待てよ、連絡したばっかりに、犯人を逆上させてしまい、唯の身に更なる危険が起こるとも限らん。

 よし、ここは心配してるであろう涼子さんに、電話して不安を取り除いてやるのが男として勤めか。

 いやいや、電話口で錯乱して収拾が付かなくなったらどうする?

 ……事情を説明しないで、唯が帰って来てるかどうかだけ確かめる。うん、それが一番いいかもしれん。

 俺は走っていた足を止め、ズボンのポケットから携帯を取り出した。よくある二つ折りのタイプで、画面が横になってTVが見れる……んな事はどうでもいい。兎に角電話だ。

 数回のコール音の後、涼子さんが出た。

「もしもし?」

「あ、涼子さん?」

「はい? どちら様でしょうか?」

「あ、俺だけど」

「俺様、で御座いますか?」

 相変わらず、マジか冗談か分からない人だ。

「俺だよ、俺。分からない?」

「そう言われましても、俺様という方は、私存じないのですが」

「もう、この声で分からない?」

「……ああ」

「思い出してくれた?」

「アナタ様は、所謂、振り込め詐欺の方ですね」

 かぁ~そう来たか! まさかそう切り替えされるとは思っても無かったぜ。そんな涼子さんに乾杯。

 どうする? ……こうなったら仕方ない。

「俺だよ、ルードリッヒ」くぅ~この名だけは、自分から口にしたくなかったぁ。だが、今は一刻を争う、そんなちんけなプライドなぞクソ食らえだ。

「本当で御座いますか?」

 うおぉ~っ、完全疑われてる~。どうせ言う事になるなら、最初から言っておくべきだった。辞めそこねた大臣の気持ちが、ちょっと分かるぜ。

「ああ、正真正銘のルードリッヒだよ」くそ~二回も言う事になるとは。

「ん~左様で御座いますか。それでは、本物と仮定して、お話を進めさせて頂きます」

「は、はぁ」

 釈然としないが、話が前に進むなら、仮定でも家庭でも何でもいい。

「それで、ご用件というのは?」

「それだ、唯、唯は帰ってる?」

 聞いてはみたが、帰ってないのは明確。俺はその後の言葉を模索した。

「帰宅しておりますが、それが何か?」

「そうですか……って、はい?」

 とんだ骨折り損だぜ。

 俺は、足元にあった小石を軽く蹴った。小石は数回道路を跳ねた後、道路の端で動きを止める。取り敢えず、無事で良かった。

「ただいまぁ」

 玄関に入ると、確かに唯の靴があった。やっぱ帰ってきてんだ。

 リビングに直行してドアを開けると、唯と涼子さんが仲よさそうにお茶していた。

「あ、お帰りお兄ちゃん」

「お帰りなさい、ルードリッヒ」

「ただいま」

 二人の笑顔を見ると、さっきまでの苦労が吹き飛んで行く。ああ、やっぱり二人は俺にとって、回復の泉なのだ。そう、再認識した。

「先程なのですが……」涼子さんが、かしこまって話を切り出した。

「何?」俺は、三人掛けの椅子に座っている、唯の隣に座った。丁度、涼子さんの正面になる。

「変な電話が御座いまして」

 やっぱりぃ、俺の電話の事かぁ。ここは、白を切るしかねぇな。

「そ、そうなんですか? で、どんな電話?」

「ええ、それが変な電話なんですよ」

 だろうな、振り込め詐欺扱いされたくらいだし。

「へぇ、どんな風に?」

「ええ、今着けている下着の色を聞いきてきたんです」

「はい?」

「奥さん、今、何色のパンティ穿いてるの? って」

 おいおい、今時そんな変態いるんかよ。天然記念物だな、そいつ。

「それで、答えたんですか?」

「ええ、聞かれましたから一応……」

 こ、答えたんだ。何て律儀な人だ、この人は。

「で、何と?」

「何時も和服ですので、下着というものは着用していません、と」

 な、なにぃっ! 下着無しですとっ! それじゃ、今俺が見てる涼子さんは……涼子さんは~ノ、ノ、ノー(ぴー)って事かぁ?

 や、やばいぞ、俺の、俺の隠れた意識が、暴走しそうだっ! もう一人の俺が、脳内を駆け回り、そして、暴れん棒が目を覚ましてしまう。

 何と、健全な性少年には危険な言葉なのだろうか。

 バカ親父……俺、本当に間違いを起こさない、自信がありません。

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迷霧の陥穽 第五話

 ペンライトに荷造り用のビニール紐、そして瑞穂の地図を取り出す京平。地図は濡れても平気な様にビニール袋に入れ、携帯重視に縮小コピーしておいた物を使う。

「ライトと地図は分かるけど、紐はどうするの? 引っ越しでもするわけ?」

「はい?」

 思わず語尾のアクセントが上がってしまう京平。

「地図が有るとは言え、中は暗がりだ。地形が変わってるかもしれないし、そもそもの地図が正しいとは限らない……だから」

「だから?」

「迷ってもこれを辿って戻れば帰れるって訳だ」

「なるほどね。でも……」

「でも?」

「途中で切れたらどうするわけ?」

「…………大丈夫」

「ホントに?」

「……多分」

「何ともねぇ」

 瑞穂は少しの溜息をついてみせたが、その瞳は好奇心に満ちていた。京平は紐の端を入り口近くの木に括り付けると、本体をザックのサイドポケットに入れた。

「ねぇ、京平?」

「ん?」

「それ一個で足りるの?」

 もっともな疑問であった。これから入る洞窟は言わば未知の世界。どれくらいの広さがあるのか皆目見当が付かない。不安そうに見詰める瑞穂。だが、京平は自信ありげに微笑むと、

「ああ、多分大丈夫だと思う」

「どうしてさ」

「予備はあるんだ」

「あ、そう」

 ペンライトを持ち、二人は中に入っていた。まずは何処が地図の入り口なのか特定する必要があった。可能性があるのは三カ所。一つは入って直ぐに十字路になっている所、二つめは三股に分かれている所、最後は分かれ目が無く真っ直ぐに伸びている所だった。京平は入ると直ぐに辺りをライトで照らした。埃っぽい空気の中に、土の匂いが入り交じっていた。地図を注意深げに見ながら、現状と照らし合わせていく。

「ここか……」

「え?」

「俺達の居る場所さ」

 京平が広げた地図を瑞穂に見せ、指さした。それは、十字路に分かれている所だった。

「て事は、まずは三択って訳ね」

「そう、前か、右か、左……ただ」

「ただ?」

「地図が正しければ道は一つ、左なんだけどね」

「それを早く言って」

 憤慨する瑞穂に京平は笑ってみせた。

 二人は慎重に左の穴へと歩を進めていった。幅は一メートル弱といった所だろうか、二人並んで歩くには少し狭い。地面には大小様々な石が転がり、時折つま先に当たったり、乗り上げてバランスを崩しそうになった。壁に手をやると、ザラザラした岩肌があり、明らかに人工的に削られた部分が見て取れた。

 分かれ道に来るたびに、京平は地図と照らし合わせて進むべき道を決めた。目標は地図中央にある広間。そして、そこに記された二重丸だった。無論、目印も忘れずに残して置く。手頃な岩肌にマジックで、来た方向を示す矢印を書いた。一見、目的地へは直ぐに行けそうなのだが、結局の所一番遠回りしなくては行けない場所にそれはあった。

 目も暗闇に慣れてきた。二人の気持ちにも多少の余裕が出てくる。地図があるとは言え、相変わらずそれが正しいかどうか不明なのは変わりはしないが……。

 幾つかの分かれ道を過ぎ、着実に目的の中心部へと近づいている。時折、寄り道したくなるような道に出くわしたが、その度に瑞穂が引き止めた。理由は「怖いから」という極単純で分かり易いものだった。京平は思った……この洞窟に入り込んでいる時点で、その怖いのではないのかと。女性というのは全く分からない、そう感じていた。

 どれくらい進んだだろうか、三つ目の紐が無くなった。

「結構深いな」

 京平はつぶやき、予備の紐を取り出す。瑞穂がその様子を見て。

「ねぇ」一言声を掛けた。

「ん? 何?」

「少し休まない?」

 そう言われて、京平は腕時計にライトを当てた。洞窟に入って約一時間経過していた。慣れてきたとは言え、この暗闇を一時間も歩いたのだ、披露も蓄積されるだろう。

「そうだね。じゃぁ、そこいらで休憩しよっか」

「うん」

 京平は適当な場所を探した。ライトで辺りを照らすと、二メートル程先に平らで開けた場所が見えた。

「あそこにしよう」

「うん」

 二人は並んで座ると、じっとりと染み出た不快な汗を拭いた。温くなったスポーツドリンクで喉を潤す。京平は改めて地図を広げ現在地を確かめた。そこを右横から瑞穂が覗く。そこだけ見ると、仲の良いカップルの様だった。

「どこら辺まで来たの?」

「ん? そうだなぁ、この辺だと思う」

 京平が、真ん中より少し左上を示した。

「あんま来てなくない?」

「そうだなぁ、案外この洞窟って広いのかも」

「広いって、どれくらい?」

「入り口がここだろ? で、今居る所がここだと仮定すると……」

「すると?」

「持ってきた荷造り用の紐の長さが一個百メートルだから……」

 そう言うと京平は地図を指で測り始める。

「どんな感じ?」

「思ったよか広いな、ココ」

「え?」

「単純に目的地の距離だけ言うと、後、八百メートル弱位かな」

「ええ~っ! そんなにあるのっ!」

 声を張り上げる瑞穂に、京平は「ある」と、静かに言った。

 ここで誤算だったのは、予備の紐が足りないという事だ。残りは二つ、それだけでも家にあった物を残らず持ってきたのだ。それで足りる……そう京平は踏んでいた。しかし、現実は違っていた。尺図が分からないのが、ここにきて致命的なダメージを二人に与えようとしている。どうしたものか……京平はじっと地図を見詰めた。しばし見詰め、ふと瑞穂に視線を移した。

「な、何してんだ?」

 京平がそう言うのも無理はなかった。瑞穂は、少しの明かりの中、小さな手鏡を持って化粧をしていたのだから。

「何って、お化粧」

「はい?」

 こんな時でも、女って……半ば呆れて溜息を漏らす京平。

「何も、こんな時に化粧なんてしなくても」

「別に、いいじゃない……それに」

「それに?」

「ううん、何でもない」

「まぁ、いい……けどさ」

 言って再び地図へと視線を落とす京平。まずは、現状を打破出来る方法が無いか模索した。地図があるとは言え、やはり不安要素はなるべく少なくしたい。引き返す選択肢もある。撤退もまた勇気だとも考えていた。

「なぁ、瑞穂」

「何?」

「一度、戻らないか?」

「え?」

 京平の言葉に、面食らった状態の瑞穂。

「このまま進むのは得策じゃないと思うんだ」

「どうしてよ、あと少しじゃない」

「それはそうだけど……やっぱ万全を期した方がいいと思うんだ」

「でもぉ」

「瑞穂は怖くないのか?」

「何が怖いの?」

 あっけらかんと答える瑞穂。京平にとっては意外な答えだった。横道に逸れる事には、過剰なまでに怖がったのに、今の状態は怖くないとも取れる返事と表情。

「このまま進む事についてさ」

「別に、地図があるでしょ?」

「そりゃそうだけど、もし何かあったらどうすんだ?」

「ふふふ、その時は京平が守ってくれるでしょ?」

「え?」

 微笑む瑞穂の顔を京平は直視出来なかった。頼られる事が、こんなにも嬉しい事とは思いもよらなかったからだ。

「分かった、じゃもう少し行ってみるか」

「うん」

 泣く子と好きな女には勝てない……そんな言葉を脳裏に浮かべながら、京平は立ち上がった。瑞穂もそれに倣う。取り敢えず、紐がある限り進んでみようと京平は思っていた。

 しばらく進むと、短い突き当たりと右に進める分かれ道に当たった。

「ねぇ、あれ」

「ん?」

 瑞穂が指さした所に、京平は視線を移した。突き当たりの壁の向かって右上方、一メートル五十センチ位だろうか、ほんの僅かに光が漏れて来てる様に見えた。

「あの壁の向こうって何かあるんじゃない?」

「向こうっつったってなぁ……」

 何か空間がある。それはほぼ間違いないだろう。だが、今の京平達にはそれを確認出来るだけの道具が無かった。あるとすれば、自身に備わった両手くらいなものである。京平がそう思い、じっと手を見ていると。

「ちょっと掘ってみようよ」

「はい?」

「だからさぁ……」

「分かった。皆まで言うな」

 京平は瑞穂の言葉を遮り、言った。

 ペンライトの明かりを頼りに、二人は発見した場所を掘ってみた。とは言っても、女の子に穴掘りはさせられない。その殆どは京平が手を出していた。壁は見た目ほど固くなく、小さな穴は容易に広がっていった。これは案外いける。そう京平は感じていた。後ろで瑞穂が好奇心一杯の瞳で見詰めていた。

 時間にして数十分だろうか、穴は人が一人通れる位にまで広がった。明かりは既に京平達の所まで届き、ペンライトは必要なくなっていた。京平が上半身を突っ込み、壁の向こうを覗いた。

「す、すげぇっ!」

 驚きの声が洞窟内に響き渡る。

「ねぇねぇ、何があったの? やっぱお宝? ねぇってばぁ」

 瑞穂は京平の服を引っ張りながら、自分も見たいと催促を促した。

 あまりにも急かすので、京平はろくに確認も出来ず身体を戻す事になってしまった。

「まったく……兎に角見てみ、すげぇぞ」

「うん」

 歓喜の声をあげるやいなや、瑞穂は穴に身体をねじ込んだ。

「うわぁ、すっごい!」

「だろ?」

「あっ!」

 そう言うと、残りの身体を穴に入れ、ズンズンと奥に行ってしまう瑞穂。

「お、おいっ」

 京平が止める間もなく、彼女は進んで行った。

「ったく」

「凄いよ京平! 早く来なよ」

「分かった。そこから動くなよ」

「うん」

 瑞穂の声が返ってきた。京平は荷物をまとめると、それを反対側にいる瑞穂に手渡した。そして、続けて自分も中に入り、向こう側に抜けた。

 瑞穂は穴の近くで立っていた。京平は隣に並ぶ。抜けた先の場所は広かった。一般的な体育館ほどだろうか、天井は高く、先がどうなっているのかは分からない。視線を中央にやると、そこには池があった。天井から降り注ぐ光によって真ん中あたりが青白く光っていた。そして、そこからの明かりで周囲は青から緑、深緑、藍色……黒、漆黒の闇へと移っていった。

「幻想的だけど、何だか怖いね」

 瑞穂の言葉だった。正直な気持ちだろう、京平も同じ思いだったのだから。

 二人は池の周囲を右回りにゆっくり周り、進んだ。三分の一程進んだ時だった。二人の前方に小さな社が祀ってあるのが見えた。それは壁の中ではなく、池の縁から一メートル弱入った所に造られていた。

「何だ? あれ?」

 足を止め、京平は首を傾げた。その部分だけが浮かび上がるかの如く、まるでスポットライトが当てられたように光が降り注いでいた。ほんの僅かな時、その光景に目を奪われていた京平。が、同時に妙な違和感も感じていた。

「もしかしたら、あそこにお宝があるのかも」

 しかし、そんな京平の心中とは裏腹に瑞穂が無邪気に笑う。

「お宝って……変だと思わないのか?」

「何が?」

「社だよ。こんな所にあるなんて、絶対何かあるって」

「そうかなぁ」

「まずは、位置確認だな」

 京平が地図を広げて言うと、瑞穂が、

「そんな事しなくても、ここが目的地だよ」

「まっ、一応ね」

 確かに、近道が無いかと考えていた矢先、隠し通路の如くに出来た通路。地図上でもその部分を無くせば、目的地に到達するのは一目瞭然だった。

「兎に角行ってみようよ」

 瑞穂が京平の手を取り、引っ張った。

「あっ……み、瑞穂」

 引っ張られながらも、悪い気はしない京平。社の前まで来ると、瑞穂はその手を離すどころか、一層強く握った。細い指先が京平の指と絡み、その温もりが伝わってくる。

「み、瑞穂」

「何?」

「その……手」

「いいの……だって、もうすぐお別れだもの」

 そう言うと、瑞穂はにやりと微笑んだ。

「え?」

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Sister Syndrome 第二話

 その日は眠れなかった。
 それはそうだろう、美人の母に、可愛い妹。夢が現実になったのだから。思い出すのは、和服姿とあのうなじ。ああ、妖艶だ。俺を日本人として生んでくれてありがとう、前母さん。そして、そんでもって、これからは俺はお兄ちゃんと呼ばれるんだっ。今まで兄弟が居なくて寂しかったが、これからは違う。んやぁ、毎日が楽しく過せそうだ。今こそ感謝するぞ、バカ親父。たまには親らしい事すんだな。ぐっじょぶだぜ。

 ――朝。

 とうとう一睡も出来なかった。しか~し、目覚めは爽やかだ。寝てないけど、目覚めはいい。誰が何と言おうとだ。こんなに爽やかなのは久し振りだぜ。
 俺はパジャマのままキッチンへと向かった。階段を下りると微かに味噌汁の香りがした。おお~朝はこれか、やっぱ日本人は和食だよねぇ。
「おはよう」入ると同時に挨拶をした。
「あ、おはようございます。えっと……」
 どうやら涼子さんは、俺をどうやって呼ぼうか迷っているようだ。
「俺の事は、好きに言ってもらって構わないですよ」
「そうですか、それじゃ……」涼子さんは少し考えた後、
「ルードリッヒと呼ばせて頂きますね」
「はい?」
 チョイ待て、何だよその思いっきりジャーマニーな名前は。幾ら好きに呼んでくれていいとはいえ、飛躍しすぎじゃぁありませんか?
「御嫌ですか?」困惑している俺に対して、彼女は悲しげな瞳を向ける。ぬぉぉ、それは反則だぜ。そんな瞳で見詰められたら。
「いえ、そんな事はありませんよ」と言うしかねぇじゃねぇかっ!
「よかったぁ」瞬間、涼子さんの顔が明るく華やいだ。やっぱ、君には笑顔が最高さ。ふっ……。って、俺、今日からルードリッヒなんだなぁ。まぁいいや。
「そう言えば親父は?」
「ご主人様でしたら、この手紙をルードリッヒに渡してくれと言って、今朝早くに出発されました」
 ご、ご主人様? あのバカ親父、そんな風に呼ばせてたのかよ。まさか、萌え~っとかやってねぇだろうな。やってたら、怖っ。取り敢えず手紙を確認。

『俺は仕事でコスタリカに向かう。年末には帰る。それまでは、二人をお前が守るのだ。いいな、くれぐれも間違いなぞ起こすでないぞ……さもなくば、げふんげふん』

 何故、最後があやふやなんだ? 兎に角、二人は俺に任せとけ。間違いは……自信ねぇ。
んや、それじゃ駄目だ。俺は獣か? そうじゃねぇだろ? そうだ、俺は紳士なのだ、夢幻紳士さ。
「ご主人様は何と?」
「え? ああ、コスタリカに出張だってさ」
 にしても、違和感あんなぁ。あのバカ親父がご主人様とは。
「左様で御座いますか、お忙しいですね」
 涼子さんが笑む。てか、知らなかったんかよ。
「おはよう御座います。……お母様」
 そんなやり取りをしていると、唯が起きてきた。ダボダボのパジャマには大きなラインのストライプが入っていた。少し着崩れた格好が、実にキュートだぁ。言葉使いのギャップも最高っ。朝からこんなテンションで一日やってけるんか俺。
「おはよう、お兄ちゃん」
 きた~ぁ、この至福の時が。人生最高~っ!
「おはよう、唯」
 俺はにやけた顔を悟られないように、さり気無く言葉を発した。
「お兄ちゃん、唯、お兄ちゃんにお願いがあるんだ」
 おお~何でも聞いてやるぞ。聞いてやるともさ。
「何だ? 唯」
「実は、今度行く学校に、一緒に行って欲しいの」
 そうか、唯はこっちの学校に転入する事になるんだよな。そりゃ一人じゃ心細いか。うんうん、分かるぞその気持ち。よっしゃ、俺が校門までとは言わずに、教室までも行ってやるぞ。
「いいぞ、一緒に行こうか」
「ありがとう、お兄ちゃん」唯が笑う。
「良かったわね、唯」涼子さんが微笑む。
「うん」
 何だか、この二人の場所だけ、そう、言うなればポートレートモードで撮った写真の様だった。

 唯の通う中学校は、絶滅の危機に瀕しているセーラー服だ。みんな知ってると思うが、あの服の原型は水兵さんの制服であり、襟の部分は、頭の後ろに広げて音を聞き取りやすくする為だそうだ。
 そんな便利な制服が、今では絶滅危惧種へと変貌を遂げたのは、AVの普及……。いや、たぶん違うな。
「お兄ちゃん、似合う?」
 そう言って唯が、ちょっと短めのスカートをひらひらさせながら言った。深緑のリボンと鶯色の襟にスカート。似合うぜ。似合わない訳がねぇ。
「似合うぞ唯」
「ありがと」
 っしゃぁ、いざ行かん学校へ!

 んやぁ、今朝は最高だったなぁ。教室の窓から見える空が、こんなに青かったなんて。ああ、なんて清々しい。
 これから先、俺はあんな可愛い子からお兄ちゃんと呼ばれるんだ。まぁ、涼子さんからは例の名で呼ばれるんだが……しか~し、それを差し引いても余りあるお姿、やはり俺は幸せモンだ。
「よぉ、何朝からにやけてるんだ?」
 そんな幸せ絶頂の俺に、声を掛けてきやがる奴は誰だ?
 視線だけを上に向けると、そこには真二が立っていた。
「よぉ、わが友よ」たぶん俺の顔はにやけてるだろう。
「はぁ? お前、気色悪いうえに壊れたか?」
 そんな事はないぞ。壊れるどころか、毎日、壊れた心を癒してくれる泉を……そう、あれは、回復の泉なのだ。そして、あの二人は俺にとっての女神となった。こんちくしょう。
「聞いてくれ、わが友」
 俺は真二を向かいの席に座らせると、肩をポンポンと二回叩いた。
「な、どうした一体」訝しげな表情で俺をみる真二。
「なぁ真二、アスカは元気か?」
「はい? まぁ、元気と言えば元気だが……」
「そうか、それは良かった」
「まさか、お前、俺の姉ちゃんに手ぇ出そうとか思ってないだろうな。つか、何で呼び捨てなんだ?」
「そんな事はどうでもいい」
 そうだ、真二の姉ちゃんが元気だろうが、そうじゃなかろうが、今の俺には小さな事だ。なら聞くなって? 仕方あるまい、今、俺の気持ちをストレートに伝えると、絶対叫び声から始まるのは目に見えている。なら、何か関係ない事で意識を散らす事が必要なのだ。
「どうでも良いなら聞くなよな」
「なぁ、真二」
「だから何だよ」
「お前、何時までも初号機に乗ってる場合じゃねぇぞ」
「ハナから乗ってねぇけどな」
「まぁ、いい。黙って聞け」
「いい加減にしとけよ」
 真二の期待もそろそろ限界か。否、俺の気持ちの高鳴りが限界を超えそうだ。
 もう、言いたくて言いたくて仕方がないんだぁ。
 さぁ、言うぞ真二。聞いて驚け、そして、俺の羨まし過ぎる劇的ビフォーアフターに嫉妬するのだ。あ~はははは、どうだ、凄いか? 羨ましいか? よお~し言うぞ。言っちゃうぞ。
「実はな……」言いかけた瞬間。
「ちょっと、いい?」
 ったく誰だぁ? 今、まさに俺が優位になろうとする瞬間を邪魔するのは。と、思いつつ声のした方へ視線と共に、頭を向けた。
「亜利未」
 長身でショートカットの亜利未が更に大きく見える。俺が座っている事もあるんだが、それにしたってでけぇぞ。
「亜利未……じゃないわよ。あんたねぇ、今日という今日は……」
「まぁ待て亜利未」
「何よ」
「今から俺は、真二と大事な話をしなくちゃならん」
「だから?」
「だから、今はお前の相手をしてる暇がない」
「何よそれ」
 分からん奴だなぁ。俺は、俺の幸せな時間と空間の自慢をしなくちゃならんのだ。それは、時が経てばインパクトが薄れる。そう、北海シマエビの刺身と同等なのだよ。そんな時間との戦いの中で、お前に構ってる暇なんて無いのだ!
 何故、それが分からんのだ。
「兎に角、今日は何時もより可愛いから、手を引いてくれ」
「益々、意味不明だけど」
 もう我慢ならん。俺は立ち上がり、亜利未の正面に立った。
「亜利未……俺がキスしないうちに手を引くんだ」
 言って俺は、亜利未を両手で引き寄せた。
「きゃっ」亜利未は短く言葉を発すると、次の瞬間目の前が真っ暗になった。
 衝撃が俺の顔面に広がる。星が飛び交った。ああ、あれが北斗七星。ふっ、俺の命は後三秒……。どうやら俺は、亜利未のパンチを食らったようだ。
 ああ、意識が遠くなる……。
 さらば友よ……。

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迷霧の陥穽 第四話

 頂上まで登ると、正面に小さな神社が視界に入ってきた。賽銭箱に鈴、そして閉ざされた扉。何の変哲もない神社だった。

 周りには木々の陰が落ち、火照った身体の熱を吸収してくれた。二人は辺りを見回し、洞窟の入り口を探した。

「京平はそっちお願いね」

 瑞穂が向かって左側を捜索するよう、京平に指示を出す。

「分かった」

 京平はそれに従った。

 左右に分かれた二人だったが、示し合わせた様に、裏手中央部分で鉢合わせになった。

「何かあった?」期待を込めた瞳で京平を見詰める瑞穂だったが、「別に、何も」と言う答えで、その輝きは急速に失われていった。

 二人は並んで正面に戻り、賽銭箱の前の階段に座った。京平は、コンビニで買ったミネラルウォーターを瑞穂に差し出し、自分は缶コーヒーを手に取った。

「やっぱさぁ、無いんじゃないのか?」

 コーヒーを一口飲んで、京平が言った。

「そんな事ないよぉ」

 口をとがらせ、瑞穂が反論。続けて、

「じゃぁさ、もいっかい下から探してみようよ。それで、何もなかったら、諦めるからさ……ね?」

「そこまで言うなら、もう一度降りてみるか?」

「うん」

 嬉しそうに笑う瑞穂を見て、少し呆れながらも京平は悪い気はしなかった。コーヒーの苦さとは対照的に、自分は甘いなと感じていた。

 二人は注意深げに階段を下りていった。

「そう言えばさぁ」

 何かを思い出したのか、瑞穂が口を開く。

「ん?」

「ここに来る途中で、一樹くん見かけたよね?」

「そうだったか?」

「そうだよ、何か祠みたいなとこで、こうしゃがんで何かやってた」

 瑞穂が大きな手振りで表現してみせた。

「ん~」

 と言われても、全く記憶に残っていない京平。仮に視界に入っていたとしても、中に眠る無意識の感情が排除しているのだと、京平は思っていた。しかし、瑞穂がここまで事細かに説明しているのだから、かなりの確率で遭遇しているに違いない。京平は記憶の一つ一つを思い起こし、たぐり寄せた。

「どうしたの?」

 瑞穂が、腕組みをしながら考え込んでいる京平を覗き込んだ。

「いや、別に」

 そう言ったものの、京平の脳裏に一樹は浮かんでこなかった。否、一樹だけではない。ここに来るまで何人の人と出会っただろうか? 京平は再び考えてみた。道中、コンビニ、そして神社。自宅からここまで、かなりの距離がある。誰とも会わないはずがない。だが、京平は思い出せなかった。これほど他人に感心が無い? そんな疑念にかられた。

「なぁ、瑞穂」

「ん?」

 一番下まで下り、一息ついた時だった。京平は瑞穂に向かって問うた。

「一樹もそうだけど、ここに来るまでに誰かに会ったか?」

「はぁ?」

 あまりの突飛な質問に、瑞穂は目を丸くした。普通常識的に考えれば、京平の質問は常軌を逸していたからだ。

「京平、マジで言ってるの?」

「え? 何がさ」

「だから、誰にも会ってないって話よ」

「俺はそんな事言ってないぞ。誰かに会ったか? とは言ったけど」

「同じ事よ」

「ま、まぁ、それはそうだけど……」

 京平は言いよどみ、眉間にしわが寄った。左手で右腕の肘を支えつつ、右手人差し指をそのしわの寄った眉間に当て、唸る。

「ん~」

 それを黙って見ていた瑞穂が、

「何よそれ、古いだか新しい畑って探偵の真似?」

「警部だ」

 すかさず突っ込みを入れる京平。

「どっちだっていいじゃんっ!」

 口をとがらせる瑞穂。確かに、今はそんな事は問題ではない。重要なのは、道中誰かに会ったか、それなのだ。瑞穂は出会っているし、一樹も見かけた。途中立ち寄ったコンビニだって、自分達の他にもお客が居たと言っている。しかし、京平の記憶には残っていなかった。

 ――それは何故だ?

 そして京平は一つの答えを導き出したが、すぐさまそれを否定し鼻で笑った。『恋は盲目』そんな言葉が脳裏に浮かんだからだった。

「アホだな俺」

 ぽつりと呟いた言葉に、瑞穂が反応した。

「え? 何が?」

「あ、いや、何でもない」

 ぎこちない仕草で誤魔化す京平。しかし、それがかえって不自然に見えたのか、瑞穂は疑念の眼差しを向ける。

「本当に?」

「ああ」

「まぁ、いいわ」

 上がる語尾が「聞かないどいてあげる」と言っていた。

 暫しの休憩を終え、二人は再び鳥居をくぐって階段を登り始めた。京平を先頭に瑞穂が続いた。ゆっくりと着実に、石段を踏みしめて二人は登っていく。砂混じりの石段は軽く滑る感じがした。

 中間よりも少し過ぎたあたりだろうか、京平が足を止めた。

「どうしたの?」

 瑞穂が、次の段に乗せるために持ち上げた左足を止め、戻しながら言った。

「これ」

 京平が指さした先には、生い茂った草むらに隠れて古びた地蔵があった。

「地蔵……さん?」

「ああ、さっきもあったっけ?」

「ん〜どうだったかなぁ」

「ふうぅ、まぁいいや。それよか、そこ見てみなよ」

「ん?」

 京平に即されて瑞穂が見た先には、細い道が続いていた。ただ、整備された道ではなく、獣道と言った方が正しいかもしれない。

「怪しいと思わないか?」

「確かに」

 急な斜面に時折足を取られながらも、京平を先頭に二人は奥へと進んで行った。獣道とはよく言ったもので、人間が歩くには不都合このうえ無かった。

「きゃっ」

「どうした!」

 瑞穂の悲鳴に振り返る京平。

「もう、嫌ぁっ」

「はいぃ?」

 悲痛な叫びかと思いきや、瑞穂は両手を無造作に振り回してしかめっ面を浮かべていた。どうやら、何かを追い払っているようだった。

「ど、どうした?」

「どうって……こいつらが、五月蠅くって」

 言いながら、瑞穂は右手を頭上で払った。京平はその先を目で追った。

「はぁ……何だそんな事か」

 正体が分かると、京平には安堵感が込み上げてきた。

「仕方ないでしょ! 私、この手のモノ苦手なんだから」

 言って、もう一度右手を振った。京平は三度首を左右に振って、溜息を一つついた。小さな羽虫が苦手だなんて、これから洞窟探検しようとしているのに大丈夫なのか? そう思った。洞窟なら、得体の知れない虫だって居るだろうし、コウモリや蛇なんかは既に定番だろう。かと言って、この道の細さでは二人並んで歩くのは困難だ。瑞穂にはもうしばらく我慢してもらうしかなかった。

「兎に角、進むよ」

「うぅぅ」

 瑞穂が不満そうな声を上げたが、京平は向き直り再びその歩をゆっくりと進めた。

 暫く進むと道が広がった。丁度、階段の踊り場のような感じで斜面が削られていた。

「ここか?」

 着いた途端、京平の口から出た言葉がそれであった。そこには、広場ともう一つ、斜面側に縦の亀裂がぽっかりと口を開けていた。一般的に使われるドアより、二回り程小さい感じで奥に暗闇が覗いていた。

「ここ……なの?」

 瑞穂が京平の左隣に並んで、その入り口を覗いた。

「多分、かなり怪しい感じ」

「ん~」

 瑞穂は数歩前に出ると、右に左に移動しながら暗闇の向こう側を探った。

「取り敢えず……入ってみますか」

「え?」

 京平は背負っていたザックを下ろすと、用意してきたモノを取り出した。

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